発酵と思考3『人間も醸す』
小倉ヒラクさんの著書『発酵文化人類学』から抜粋
発酵をもっとも一般的に定義すると
人間に有用な微生物が働いている過程
であると言えるでしょう。あわせて発酵とコインの表裏になっている「腐敗」は
人間に有害な微生物が働いている過程
と定義することができます。
ざっくり言うとだな。人間に役立てば発酵、役に立たなければ腐敗
と言うことになります。
著書「発酵文化人類学」 P035より
人間は誰しも必ず年を取る。考えてみると、年を取るということは「醸す(かもす)」ことなのかもしれない。
味噌は大豆と塩と麹からできている。
豆をいくら長い時間、蔵に置いていても味噌にはなってくれない。
大豆に塩と、麹という要素が組み合わさったときにはじめて味噌になるのだ。
人間も、それと同じかもしれない。
人間も年を重ねる過程で「経験」という微生物を取り込む。
その微生物を、自分のフィルターをとおして育てていく。
そうすると、自分という人間を「醸しだす」ことになる。
ただ、人間が人生を通して「醸しだす」のには2種類ある。
一つは、他の人の役に立てるように醸し出していくこと。
もう一つは、自己中心的に、他の人の役に立つことを考えずに醸し出していくこと。
前者を「発酵」といい、後者を「腐敗」という。
人間も、味噌も、腐ってはダメ。
つねに、明るく前を向き、人の役に立って生きていきたいものだ。